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スレッド:商業の罠と課金地獄と裸ヘルム


[558] By とくまろん ID:
久しぶりに以前モバで投稿してたエタゾまんまの小説の短編というか続きというか突然昨晩思いついたので、iPhoneポチポチしてました。

「がんがれ、ヒロシくん」

「いいか、彼の色々アレな性格に騙されるな」

剣術の師である真之介のアドバイスに、ハイと返事をした。

「ふふふ、杉田浩(ひろし)、まさか君と闘う事になるとはな。だがこれも運命なのだろう。ここを通りたくば押し通れっ!」

浩と対面している男性、榊原君は妙なポーズをとりながら言った。
言い切った後に自分の言葉に酔いながら気持ち悪い微笑みを浮かべている榊原君は中二病の弁護士だ。

弁護士なので非常に頭がよく、浩が大学受験の時にはわかりやすく教えてくれ助かった。

しかし、普段の彼はアニメしかみていないのではないかと思えてしまう程の所謂オタクという部類の人だった。

今日もいつもどうり浩と真之介が剣術の稽古をしているそばで彼は購入したばかりの漫画を読みながらニヤニヤしながら読んでいた。

そんな中二病の榊原君に「榊原君、お楽しみのところ申し訳ないが今日は浩君の相手をしてくれないか」と真之介が声をかけた。

榊原君は幼い頃から真之介と暮らしていて、浩の兄弟子という事になるのだろうが、彼が剣術を披露しているところを浩は一度も見た事がなかった。

榊原君がどの程度のレベルなのか予想できない。そして普段の彼のイメージだと剣を操る姿はまったく想像できない。

そんな正体不明の相手は、いい腕試しになるのかもしれない。


浩は、お願いしますと頭を下げてから木刀を構えた。

「私なら大丈夫だ、隙があったらどこからでもかかってきなさいっ!」

と言いながら榊原君は真之介から渡された木刀をゆっくりと構えた。

妙な気合いの入ったセリフとは裏腹に、榊原君の構えは流れるように弧を描き、ぴたりと前傾の姿勢で静かに停止した。

まったく隙がない。
半身に構え、左前腕を真横にして木刀を水平に構えている。しかし、浩からはその木刀は見えない。榊原君の腕に隠れて見えないのだ。


兄弟子であるのだからそれなりに強いのだろうと推測は出来るが、榊原君の構えは浩の推測をはるかにうわまわっていた。

どう攻めるか考えあぐねているところで「ふ、俺のコスモに驚いているようだな。一歩踏み出せないのだろう。ならばきっかけを作ってやろう。キランッ!」

最後のキランッの意味はよくわからないが、言い終わると同時に榊原君の体が少し沈んだようにみえた次の瞬間浩は後ろに飛び下がった。

浩がいた場所を榊原君の木刀がヒュンッと通り過ぎたと思ったら、すかさず二刀目が降りかかってきた。木刀がどの位置から斬りかかってくるのかわからない構えのまま榊原君は一刀一刀確実に浩を追い詰める。

凄まじいスピードで静かに繰り出される榊原君の剣撃を、五刀目でなんとか浩は受け止めた。しかし、その五刀目はあきらかに先の四刀に比べると遅かった。

浩が受け止める事が出来るであろうスピードで繰り出されたのだ。

「浩、落ち着いてよく見ろ。榊原君の腕は確かだが、ここ数年アニメにどっぷり浸かってかなり腕が落ちている。隙はある」

真之介の助言を聞きながら、これで腕が落ちたって…と浩は自分の目の前でゆっくりと構えなおす榊原君を驚嘆の目でみた。

「ふ、ふふ、ふふふ、青い、青いぞ浩っ! まだまだお尻が蒙古斑だっ!」

きぇぇぇっ!と奇声を発しながら榊原君が再びせまってきたが、目が慣れたのか今回は一刀目から受け止める事が出来た。

激しい剣撃に耐えながらなんとか隙を探す。

そして徐々に見えてきた。

左脇が少し開いている。

気が付いた瞬間に浩は木刀を榊原君の左脇に斜め下から滑り込ませた。

「うわっちっ!」

榊原君が仰け反るようにしてそれをかわして少し後ろにさがったところで、止めっという真之介の声がかかった。

浩は乱れた息を整える為にゆっくりと深呼吸をした。

榊原君といえば「まさか、あそこから剣をくりだすとは…なかなかやるではないかっ! よいっ! よいぞ、お主っ!」とテンションマックスになっていた。

呼吸はひとつも乱れていない。

完敗だった。
2014-11-21 09:59:00
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